「AI 入れたら効率上がりますか?」という質問は、ほぼ毎週いただきます。これに「上がります」とだけ返す業者は信用してはいけません。なぜなら、効率を測る数字を持たずに導入すると、半年後に誰も効果を語れなくなる からです。
Deer が PoC 前に必ず合意する4つの数字を整理します。
1. 月あたり処理件数
自動化対象業務が、月に何件発生するか。中小企業の請求書処理なら 200〜800 件が多いゾーンです。
これが100件未満だと、自動化の投資対効果が出にくいケースが大半です。月10件しか発生しない業務は、AI ではなく Excel テンプレで十分なことも珍しくありません。
2. 1件あたり処理時間 (人手のとき)
ここを正確に把握している会社は、実は少ないです。「だいたい1時間くらい」と答える担当者が、実際に計測すると平均 23 分だった、というのは普通です。
1週間、5件分を実測する ところから始めます。これだけで自動化の試算が現実的になります。
3. 自動化後の処理時間 (PoC で検証)
PoC で実測します。OCR + LLM 抽出だと、自動化率8割・人手介入2割という構図が多く、見かけ上の「時間ゼロ」より、「人手が必要な2割の対処時間」 が現実的な数字になります。
請求書処理の例だと、人手 23 分/件 → 自動化後 5 分/件 (うち承認操作 3 分、例外対応 2 分) というのが典型です。
4. 投資額と回収期間
初期実装 + 月額運用 + AI API コストを合算し、(1) × (2 - 3) × 人件費単価 で月次削減額を出す。
例: 月600件 × (23-5) 分 = 月180時間削減。時給換算 ¥3,000 として月54万円。実装 200万円・月額運用 10万円なら、回収は 5ヶ月 です。
中小製造業の実例
ある製造業 (45名規模) で実際に出た数字:
| 項目 | 値 | |---|---| | 月あたり請求書件数 | 600件 | | 人手 1件あたり処理時間 | 8分 (※短い業務でも積もる) | | 自動化後 1件あたり処理時間 | 0.8分 | | 月次削減時間 | 72時間 | | 月次削減コスト | ¥216,000 | | 初期実装 + 月額 (年間) | ¥360万円 | | 回収期間 | 8ヶ月 |
「件数 × 時間 × 単価」というシンプルな式ですが、この計算を PoC 前に合意できているプロジェクトは、開始後の意思決定が圧倒的にぶれません。
「効率が上がる」を経営報告に使える形に
経営者にとって、ふんわりした「効率向上」ほど価値のないものはありません。月次の P/L にどう乗るかが見えて初めて、AX は投資になります。
Deer の業務自動化案件では、PoC のキックオフでこの4数字を表にし、ステークホルダー全員で握ります。それが終わってから、初めて実装フェーズに入ります。